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長野県より戦前・戦中の「国策紙芝居」ほか紙ものを宅配便にて買取り

戦前から戦後まもなくに発行された日本教育紙芝居協会の「国策紙芝居」ほか紙芝居や、大正時代の児童雑誌『コドモノクニ』、昭和初期(戦前)の保育絵本雑誌『キンダーブック』と付録の絵雑誌『ツバメノオウチ』といった紙ものを段ボール1箱分の宅配買取させていただきました。大切に保管されていたお品物をお譲りくださりありがとうございます。
こちらの買取事例は紙芝居と子ども向け雑誌の2つに分けてご紹介いたします。『コドモノクニ』ほか戦前の児童雑誌・保育絵本については「『コドモノクニ』ほか戦前の児童雑誌の古書を宅配便にて買取しました」をご覧ください。

  • 宅配買取
  • 2020年7月24日
地 域 長野松本市
買取分野

【商品詳細】


書名:責任
著者:小島鉄広原作・脚色 加藤春雄作画
出版社:大日本文化画劇報国会
発行年:昭和16年(1941)


書名:乙女橋
著者:西正世志絵画 日本教育紙芝居脚本 逓信省管理局指導
出版社:日本教育紙芝居協会
発行年:昭和16年(1941)


書名:三平の魂まつり
著者:古谷光堂脚本 西原比呂志絵画
出版社:日本教育紙芝居協会
発行年:昭和16年(1941)


書名:真鯉緋鯉
著者:山田久寿郎脚本 羽室邦彦絵画
出版社:日本教育紙芝居協会
発行年:昭和18年(1943)


書名:うづら
著者:砥上峰次編
出版社:日本教育紙芝居協会
発行年:昭和15年(1940)


書名:蜘蛛の糸
著者:芥川龍之介原作 鈴木景山構成 羽室邦彦絵画
出版社:日本教育紙芝居協会
発行年:昭和16年(1941)


書名:蜘蛛の糸
著者:芥川龍之介原作 鈴木景山構成 羽室彰人絵画
出版社:日本教育紙芝居協会
発行年:昭和21年(1946)


書名:麦あげ
著者:大島万世脚本 野々口重絵画
出版社:日本教育紙芝居協会
発行年:昭和18年(1943)


書名:モリノウンドウカイ
著者:伊馬鵜平原作 永村貞子脚色 宇田川種治絵画
出版社:日本教育紙芝居協会
発行年:昭和17年(1942)


書名:新版イソップ物語
著者:小林敬三原作 高田健二絵画
出版社:日展
発行年:昭和21年(1946)


書名:玉子村
著者:緒貫武雄脚本 松井末雄絵画 逓信院指導
出版社:日本教育紙芝居協会
発行年:昭和21年(1946)


書名:渡り鳥
著者:栄谷むつを脚本 西原比呂志絵画
出版社:逓信省
発行年:昭和22年(1947)


書名:愉快な約束
著者:堀尾勉作・小谷野半二画 大蔵省・通貨安定対策本部監修
出版社:フレンド社
発行年:昭和22年(1947)
備考:非売品

戦前・戦中の手書き紙芝居や国策紙芝居といった紙ものは蒐集家や研究者などから需要があります

日本における紙芝居のルーツは『源氏物語絵巻』などの絵巻物や寺院における「絵解き」であり、江戸時代の「のぞきからくり」や「写し絵」から派生したと考えられています。「画劇」と呼ばれることもあります。
明治時代に誕生した「立絵紙芝居」は竹串を付けた紙人形を舞台で動かして演じさせるもので、歌舞伎の演目、西遊記など古典の活劇、怪談ものなど大人向けの作品も多くありました。大正時代になるとその人気は下火になりますが、大正12年(1923)の関東大震災を機に子どもの娯楽として再び人気になります。しかし警察の取締対象となり、昭和4年(1929)に浅草区菊屋橋警察署管内で立絵紙芝居そのものが禁止になると、今度は現代の私たちにも身近な「平絵紙芝居」が登場します。

平絵紙芝居を考案した後藤時蔵と田中次郎は、映画の看板画家であった鳥居馬城と工芸学校の学生だった永松建夫とともに1作目となる『魔法の御殿』を昭和5年(1930)に完成させます。そして2作目では白骨面に黒マントの怪盗が活躍する『黒バット』が鈴木一郎の脚本によって制作され、黒バットを倒した正義のヒーローが主人公の『黄金バット』(鈴木一郎脚本、永松健夫画)が登場すると子どもたちから大人気となります。
そのほか活劇・冒険物語・時代劇・継子いじめ・孝行美談・怪談・悲話・漫画などの紙芝居が制作されました。
なお、このころに作られた平絵紙芝居は1枚1枚が手書きの1点もので、大きさも今の半分ほどでした。また、当時は「貸し元」と呼ばれる紙芝居業者がおり、倉庫にまとめて保管されていました。そのため火災などが起こると全て燃えてしまい、戦後には絵物語・映画・アニメ・漫画になるほどの人気作であった『黄金バット』の戦前作品もまたその殆どが損耗・散逸・消失しています。そのため枚数が揃った状態で現存しているものは非常に貴重です。

そして『黄金バット』のような街頭紙芝居が子どもたちに人気なことを知り、教育のために活用しようとした動きが「教育紙芝居運動」です。「教育紙芝居」は「印刷紙芝居」とも呼ばれています。
最初に動いたのは日曜学校(教会学校)で伝道活動をしていた今井よねであり、子どもたちが街頭紙芝居に夢中になっているのを見て、昭和8年(1933)に「紙芝居刊行会」を設立して初の印刷紙芝居となる『クリスマス物語』を制作・発行します。当時まだ「非教育性」といった点から批判されていた街頭紙芝居でしたが、アメリカ留学から帰国したばかりの今井よねに先入観はなく、『旧約聖書物語』などを紙芝居を通じて布教しました。
そして昭和10年(1935)には子ども向け雑誌や書籍の編集者であった高橋五山が、現在保育園や幼稚園で利用されている紙芝居の原型となる、全10巻の「幼稚園紙芝居」シリーズを出版しました。子ども向けの仏教紙芝居も刊行した高橋五山は教育紙芝居の生みの親と言われており、高橋五山賞という児童文学賞も存在します。
また、今井よねの活動に影響を受けた人物に松永健哉という教育家がおり、昭和12年(1937)に日本教育紙芝居連盟を設立しました。創設時のメンバーには青江舜二郎・国分一太郎・堀尾青史・佐木秋夫など、児童文学作家や教育家だけでなく劇作家や宗教学者もいます。その後、日本教育紙芝居連盟を母体に「日本教育紙芝居協会」が設立されました。

日本教育紙芝居協会は 教育紙芝居の出版・普及活動のほか、紙芝居に関する基礎的研究を目的として設立された組織でした。しかし設立直後に戦時下となったことで体制擁護の姿勢を取り、戦時中は戦意高揚のプロパガンダとして戦争に協力する国民教化を目的とした「国策紙芝居」を発行していきます。道徳的な話を紙芝居という娯楽を通して子どもに植え付けようとしたことは国から評価され、国策紙芝居は全国に配布されることになります。そのため印刷紙芝居の出版部数は戦前から大幅に増え、日本だけでなく台湾や朝鮮にも広められました。
国策紙芝居には体力向上や生活改善などを題材とした国策紙芝居のほか、国史・天皇・武士道などについて国体紙芝居、日本や世界の英雄伝・公民知識・母性保護などの教化紙芝居、戦局や国際情勢を伝えるニュース紙芝居、日本や満洲の産業などを取り上げた文化紙芝居などの種類があります。

「渡り鳥」

こちらの事例で宅配買取させていただいた紙芝居のほとんどは、逓信省(戦後における郵政省)の後援・指導のもとに日本教育紙芝居協会が戦前や戦中に制作・発行した国策紙芝居です。「責任を持って郵便物を届けましょう」「戦地のお父様に葉書を出しましょう」「簡易保険は便利だよ」といった、郵便がらみの啓発的な内容となっています。
戦後、GHQによるメディアの検閲によって軍国主義的・忠君愛国的な内容のものを含め紙芝居もその多くが処分されましたが、復員してきたお父さんが家族と再会して喜ぶ「玉子村」などの作品は戦後も制作されています。また、戦前に発行された作品も検閲で許可の出た作品は検閲印が押され実演が許可されました。問題のある部分のみ墨塗りされている作品もあります。なお、買取りさせていただいた「乙女橋」には保険金の金額を訂正した跡がありました。


「蜘蛛の糸」検閲印


「モリノウンドウカイ」墨塗り


「乙女橋」金額修正

愛書館中川書房では「少年回天記」「見えない悪魔」「煙突小屋」「愛の山河」「王子ジーグフリード ニーベルンゲン物語」「和銅異聞」「おんぼろバスのちーちゃん」「少年コンゴオ」「スパイあの手この手」「空の軍神」など、戦前から戦後まもなくに制作された手書き紙芝居や教育紙芝居、国策紙芝居といった紙ものの出張買取を承っております。印刷紙芝居はもちろんのこと、手書き(肉筆)の紙芝居は特に蒐集家の方や専門家から需要があります。

なお、こちらの紙芝居には包装用の袋が付属していましたが、戦前の刊行物などの紙ものは書き込みや包装紙などから読み取れるものもあります。整理・処分をご依頼いただく際は「破れているから」「汚れているから」と処分せず、そのままの状態でお譲りくださいますようお願いいたします。

紙芝居ほか戦前・戦中の紙ものや古書の買取強化中!

このほか愛書館中川書房では『講談社の絵本 第3巻16号 漫画と教育紙芝居』『コドモ隣組 翼賛紙芝居物語』ほか戦前書籍、『教育紙芝居集成 高橋五山と「幼稚園紙芝居」』『紙芝居20年の歩み 紙しばい広場・総集編』ほか専門書、寺山修司『大人の紙芝居 まぼろし劇場』など紙芝居や子どもに関する紙ものや古書(絵本・児童雑誌ほか)の出張買取も承っております。
『紙芝居大系 街頭紙芝居編 全15冊』『紙芝居 レコードエホン』『村の保育所』『教育紙芝居 効果と指導』などお手元に気になる品がありましたらお気軽にご相談ください。


書名:講談社の絵本 ゴールド版 全120冊
出版社:講談社
発行年:昭和34年(1959)~

愛書館中川書房は東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県など関東地方を中心に全国各地へ出張買取にお伺いしております(内容・量・地域によっては出張や買取りができない場合があります)。また、こちらの買取事例のように遠方かつ少量の場合は、品物の内容によって宅配買取を承っております。

宅配買取では買取りをご希望されている書籍を段ボールなどに入れていただき、着払いでお送りいただく形となります。お電話でお申し込みいただいた際に買取担当がおおよその内容をお伺いし、1万円以上のお支払いが出来ると判断した場合のみ受付させていただきますのでご注意ください(事前連絡のない場合はお受けできません)。詳しくは買取の流れをご覧ください。
宅配買取・出張買取のお申し込みは下記の買取専用フリーダイヤルにて承っております。
【古書出張買取専用フリーダイヤル 0120-489-544】

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