王羲之の遠宦帖、平安何如奉橘三帖ほか故宮博物院の名蹟を出張買取

書名：台北・故宮博物院の名蹟 晋 王羲之 平安何如奉橘三帖
出版社：二玄社
発行年：昭和54年（1979）

王羲之は息子の王献之とともに「二王」と称される、書の芸術性を確固たらしめた書家です。日本でも奈良時代から手本とされるなど、後世の書家に多大な影響を与えました。
門閥貴族の家に生まれた王羲之は若い頃から朝廷の高官に人格と見識を称えられ、会稽王友・臨川大守・江州刺史・護軍将軍などを歴任したのち、永和7年（351）に右軍将軍と会稽内史に任じられます。会稽郡山陰県へ赴任した王羲之は山水に恵まれたこの土地を気に入り、詩や音楽に耽りました。しかし赴任から3年後、王羲之と不仲であった王述が会稽内史を管轄する揚州刺史になったことで官を辞し、隠居生活を送りました。

王羲之が「書聖」「二王」と呼ばれるのは、楷書・行書・草書の各書体を完成させて芸術としての書の地位を確立したからです。後漢の蔡邕、魏の鍾繇から書を学んだ衛夫人（衛鑠）によって筆法を授けられた王羲之は、漢や魏の碑文も研究して流麗・温雅・端正な書風を生み出しました。
王羲之の代表作には行書『蘭亭序』『集王聖教序碑』、草書『十七帖』、楷書『楽毅論』『黄庭経』などがあり、そのほか王羲之などの手紙をまとめた『淳化閣帖』も有名です。
なお、唐朝の第2代皇帝である太宗（李世民）は王羲之の書を愛し、膨大な量の真行や草書を収集しましたが、その後の戦乱により王羲之の真筆はすべて失われたと考えられています。現在王羲之の書とされているのは、唐代以降に模写したものや石版や木板に模刻して制作した拓本などです。

『遠宦帖』は『十七帖』のうちの1通で、「省別」の二文字から始まっているため「省別帖」とも呼ばれています。「墨水廓填」といわれる文字の輪郭を墨で描いた後に文字の周囲を墨汁で塗りつぶすの手法で作成されており、唐代第一級の模本と評されています。
親戚の家族が離ればなれになったことを心配し、自らの妻の病状等について報告する内容であり、益州刺史の周撫に宛てて書かれたものと考えられています。

『平安何如奉橘三帖』も『遠宦帖』と同様に王羲之が書いた手紙です。行書兼草書「平安帖」と行書「何如帖」「奉橘帖」の3通あり、どれも生活の細々とした内容を記しています。
こちらは「双鉤廓填」という原本の上を透視できる厚さの紙で覆い、文字の輪郭を先に書いた後に残る部分を描き順で埋める技法で作られた模本です。もっとも王羲之の書の真相に近いものと評されています。

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以前には『禅林墨跡拾遺 全3冊』『王羲之王献之全集』『晋 王羲之 快雪時晴帖』『王羲之全書翰』『宋搨定武禊帖』などの中国や日本の書道に関する古書を出張にて買取りさせていただきました。

【当店取扱商品】
『王羲之書法字典』杭迫柏樹 編 二玄社／『日本書流全史』小松茂美　講談社／『甲骨文字字釈綜覧』松丸道雄・高嶋謙一編 東京大学出版会／『初世 中村蘭台印譜』中村淳編 二玄社

書名：中国印譜解題
著者：横田実
出版社：二玄社
発行年：昭和51（1976）

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