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神奈川県横浜市にて展覧会「三ッ谷洋子氏寄贈 久生十蘭資料~近年の収蔵資料から~」が開催されています。

12月9日(土)から神奈川近代文学館(神奈川県横浜市)にて「三ッ谷洋子氏寄贈 久生十蘭資料~近年の収蔵資料から~」が開催されています。

三ッ谷洋子氏寄贈 久生十蘭資料~近年の収蔵資料から~

会場:神奈川近代文学館第3展示室(神奈川県横浜市中区山手町110)
会期:2017年12月9日(土)~2018年1月21日(日)
休館日:月曜日(1月8日は除く)、12月28日(木)~1月4日(木)
開館時間:9:30~17:00(最終入館16:30まで)
入館料:一般250円 20歳未満及び学生150円 65歳以上・高校生100円 中学生以下無料

久生十蘭は「多面体作家」「小説の魔術師」と呼ばれた日本の小説家です。明治35年(1902)に北海道の函館に生まれ、旧制函館中学を中退して東京の聖学院中学に移った頃には芥川龍之介を模範として慕い、文学書を読みふけりました。しかし聖学院中学も中退してしまい帰郷、函館中学での縁から函館新聞社に勤め始めます。そして函館新聞社で勤務しているうちに演劇に興味を持った久生十蘭は演劇集団に参加したり同人グループを結成し、大正15年(1926)に処女小説「蠶」と処女戯曲「九郎兵衛の最後」を発表しました。昭和3年(1928)に上京してからは、戯曲『牛山ホテル』や長篇小説『暖流』で有名な劇作家・小説家・評論家の岸田國士に師事し、岸田國士が主催する演劇雑誌『悲劇喜劇』の編集に従事しました。翌年にはパリに遊学し、フランスの演出家であり俳優や劇団主宰者でもあるシャルル・デュランに師事します。
昭和8年(1933)に帰国したのちは新築地劇団演出部で舞台監督を務めますがまもなく脱退、函館中学校の縁からモダニズムの代表的な雑誌であり『新青年』に作品を発表していきました。『新青年』は江戸川乱歩や横溝正史といった探偵小説作家の活躍の場であり、夢野久作や牧逸馬、小栗虫太郎などの作家を生み出しています。久生十蘭は『新青年』にフランスの劇作家・小説家であるトリスタン・ベルナールの作品「夜の遠征」「天啓」「犯罪の家」の翻訳、パリ滞在の経験を元にした「八人の小悪魔」をはじめとする連作集(のちに『ノンシャラン道中記』に改題)、初の本格的な小説『黄金遁走曲』などを発表していきました。
昭和11年(1936)になると岸田國士の推薦で明治大学文芸科講師を務め、翌年には岸田を発起人として結成された文学座に参加し、ジュール・ロマン作「クノック」や内村直也作「秋水嶺」の演出に携わります。その活動と並行して、レオン・サジイ『ジゴマ』、ピエール・スーヴェルト&マルセル・アラン『ファントマ』、ガストン・ルルー『ルレタビーユ』などフランス人作家の作品の翻訳を行っていきます。そうして得た原稿料で軽井沢の別荘を購入し、そこで日本探偵小説史に屹立する金字塔といわれる長篇探偵小説『魔都』が執筆されました。その後は大政翼賛会宣伝部の一員となり、『新青年』の依頼で中支に従軍し、海軍報道班として南方に派遣されるなどしながら、「村の飛行兵」などの短篇小説や「浜木綿」「鰯雲」「蜘蛛」「朝やけ」などの脚本を執筆しました。
終戦後は銚子や鎌倉に住み、昭和26年(1951)からは『朝日新聞』で『十字街』の連載が始まります。昭和27年(1952)に短篇「鈴木主水」で第26回直木賞を受賞、昭和30年(1955)には短篇「母子像」が世界短篇小説コンクールで第一席を獲得するなど活躍を続けますが、昭和32年(1957)6月に食道癌により板橋の癌研究院に入院、10月に自宅で亡くなりました。
久生十蘭の執筆した作品は探偵小説・捕物帳・歴史小説・SF・漂流記・冒険小説・幻想小説・ナンセンス小説などがあり、「ジュウラニアン」と呼ばれる人々から熱烈な支持を得ています。代表作としては長篇作品『顎十郎捕物帳』『キャラコさん』『魔都』『黄金遁走曲』『金狼』、短篇作品「湖畔」「ハムレット」「うすゆき抄」「母子像」などがあります。また、国書刊行会からは平成20年(2008)に『定本 久生十蘭全集 全12冊』が刊行されました。
2017年は「小説の魔術師」「多面体作家」と評され、今も根強いファンがいる久生十蘭の没後60年にあたります。

口述筆記の久生十蘭には珍しい完全自筆原稿が展示されます

神奈川近代文学館で開催される展覧会「三ッ谷洋子氏寄贈 久生十蘭資料~近年の収蔵資料から~」では、久生十蘭の姪にあたる三ッ谷洋子によって平成21年(2009)と平成26年(2014)に寄贈された創作メモやノート、完全自筆原稿「月」「花」などが展示されます。久生十蘭は口述筆記によって作品を組み立てていったことで有名な作家であり、自筆原稿はとても珍しいものになります。また、作家としてデビューする前のフランス遊学中に母へと送った絵はがきも展示されます。

また、神奈川近代文学館では常設展「文学の森へ 神奈川と作家たち」の第3部にあたる「太宰治、三島由紀夫から現代まで」も同時期に開催されています。こちらには太宰治・坂口安吾・島尾敏雄・大岡昇平・安部公房・三島由紀夫・澁澤龍彦・山本周五郎・開高健・石原慎太郎など、神奈川県にゆかりのある作家の自筆原稿などが展示されています。第3部とありますが「文学の森へ 神奈川と作家たち」の開催は今回が初めてであり、第1部「夏目漱石から萩原朔太郎まで」は2018年1月27日(土)~3月11日(日)、第2部「芥川龍之介から中島敦まで」は2018年5月19日(土)~7月16(月・祝)に開催される予定です。第1部では夏目漱石・森鴎外・島崎藤村・国木田独歩・与謝野晶子・泉鏡花・武者小路実篤・志賀直哉・斎藤茂吉・高浜虚子・北原白秋など、第2部では芥川龍之介・川端康成・永井荷風・谷崎潤一郎・吉川英治・中原中也・小林秀雄などが取り上げられます。

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