兵庫県西宮市にて谷崎潤一郎の直筆書簡などを出張買取いたしました

谷崎潤一郎 直筆書簡（封筒付）
「先日は失礼いたしました。さて乱菊物語もう少し書きたいと思ひ昨日まではその気でをりましたが……」

谷崎潤一郎・千代・佐藤春夫連名挨拶状

谷崎潤一郎ほか作家の書簡や草稿などの直筆ものは蒐集家・愛好家・研究者などから人気があります

古書店というと書籍だけを扱っていると思われるかもしれませんが、愛書館中川書房では作家直筆の書簡や原稿（草稿）、色紙、日記、創作ノートといった直筆ものも取り扱っております。
こちらの買取事例では、谷崎潤一郎ゆかりの地でもある兵庫県西宮市にお住まいのお客様から、谷崎潤一郎の書簡や挨拶状などを出張にて買取りさせていただきました。

兵庫県西宮市は大阪市と神戸市の中間に位置する都市で、大正時代から昭和時代初期には「阪神間モダニズム」と呼ばれる文化が形成されていました。日本橋生まれの谷崎潤一郎は関東大震災の後に兵庫県へ移住しており、代表作のひとつである『細雪』（昭和18年発表）にも西宮市内に関する描写があります。

谷崎潤一郎は『痴人の愛』『春琴抄』『陰翳禮讚』『細雪』ほか様々な作品を書き上げた近代日本を代表する作家のひとりですが、そんな彼の私生活のエピソードとして有名なのが「細君譲渡事件」です。
大正4年（1915）に石川千代子と結婚した谷崎潤一郎は翌年に長女が生まれますが、次第に千代子の妹であるせい子に惹かれていったことで夫婦仲は悪化していきます。谷崎潤一郎の友人であり千代子を不憫に思った詩人・小説家の佐藤春夫も交えて三角関係となり、大正10年（1921）には佐藤春夫に千代子を譲るという話になりましたが、前言撤回して両者は絶縁関係になりました。大正15年（1926）に和解し、昭和5年（1930）に谷崎潤一郎と千代子は離婚、千代子は佐藤春夫へ嫁ぐことになります。
こちらの事例でご紹介している「谷崎潤一郎・千代・佐藤春夫連名挨拶状」は、佐藤春夫と千代子の再婚後に新聞社や知人へ送られた書面です。「我等三人此度合議を以て千代は潤一郎と離別致し春夫と結婚致す事と相成」「素より双方交際の儀は従前の通に就き」と記されています。
挨拶状が送られたのは同年8月のことで、新聞紙面で取り上げられた結果「細君譲渡事件」として社会問題化します。長女の鮎子は聖心女子学院からの退学を余儀なくされるなど、谷崎潤一郎の周囲は一気に騒がしくなりました。
一緒に買取りさせていただいた谷崎潤一郎の直筆書簡も同じく8月に書かれており、当時朝日新聞で連載中だった『乱菊物語』（未完）の今後と原稿料について、担当者とのやり取りが記されています。

愛書館中川書房では明治時代以降、文壇で活躍した作家の直筆ものの出張買取を承っております。
以前には、遠藤周作・木下杢太郎・山田風太郎・安藤鶴夫・大江健三郎・長谷川伸などの書簡や葉書も出張にて買取りさせていただきました。
作家の直筆もののなかでも、これまで人目に触れてこなかったものや作家の個人全集に収録されていないものは蒐集家・愛好家、研究者の方から特に人気があります。

作家の直筆もの関係の買取事例については「池波正太郎ほか文学作家の草稿（直筆原稿）・書簡など出張買取」「岡部伊都子ほか作家の草稿（直筆原稿）・葉書など出張買取」なども合わせてご覧ください。

谷崎潤一郎直筆書簡・封緘葉書（石井漠・奥様宛）

谷崎潤一郎につきましては「谷崎潤一郎の署名本・初版本、直筆原稿(草稿)・書簡を出張買取します」でもご紹介しております。

書簡・葉書・草稿（直筆原稿）・色紙など作家の直筆ものを買取強化中！

このほか愛書館中川書房では書簡や葉書だけでなく草稿（直筆原稿）・色紙・日記・創作ノート・メモ書きなど作家の様々な直筆ものの出張買取を承っております。
森鴎外・斎藤茂吉・有島武郎・北原白秋・西脇順三郎・大江健三郎・松本清張・森有正・井上靖・埴谷雄高・江口渙・金子光晴・西條八十など、お手元に気になる品がありましたらお気軽にご相談ください。

佐藤春夫『わが北海道』草稿（直筆原稿）

松本清張『魏志倭人伝の「盲点」』草稿（直筆原稿）

北杜夫自筆色紙

愛書館中川書房は東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県など関東地方を中心に全国へ出張買取にお伺いしております（内容・量・地域によっては出張や買取りができない場合があります）。こちらの買取事例のように近畿地方など遠方へも出張していますので、お手元に気になる品がございましたらお気軽にご相談ください。
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