東山魁夷リトグラフ付き美術古書『北欧紀行 古き町にて』を出張買取

東山魁夷ほかオリジナルリトグラフ付きの美術古書は蒐集家や愛好家などから好まれます

東山魁夷は昭和時代を代表する日本画家です。
少年時代から画家を志していた東山魁夷は東京美術学校（現在の東京芸術大学）日本画科へ進学し、明治時代から日本画家として活躍していた結城素明に師事しました。在学中から文部省管轄下の帝展（帝国美術院展覧会）に出品・入選しており、卒業後は日独交換留学生としてドイツのベルリン大学文学部美術史科に入学します。
帰国後は紀元二千六百年奉祝美術展や日展（日本美術展覧会）に出品しますが、太平洋戦争前後は画業・家庭ともに苦難が続き、後に「どん底」と回想するほどの境遇に見舞われました。しかし昭和22年（1947）に開催された第3回日展に出品した『残照』（千葉県の鹿野山から見た風景）が特選を得て日本国政府に買い上げられたことから世間からの評価も高まり、その後は風景画をメインとする意思を固めます。長野県や青森県といった日本国内だけでなく北欧・ドイツ・オーストリア・中国などへの取材やスケッチ旅行を行い、『道』『光昏』『白夜光』『朝明けの潮』『黄山暁雲』『年暮る』『緑響く』などの作品を発表していきました。
東山魁夷については買取事例「東山魁夷『木版画集 京洛春秋 春夏三撰』の古書を出張買取しました」でもご紹介しております。

買取りさせていただいた明治書房『北欧紀行 古き町にて』は昭和39年（1964）に明治書房から限定100部で出版された東山魁夷のオリジナルリトグラフ装画・画文集です。針金や糸、糊などで綴じられていない挟み込み製本となっています。
東山魁夷は昭和38年（1962）4月18日から7月29日のおよそ3ヵ月にデンマーク、スウェーデン、ノルウェー、フィンランドといった北欧の国々へスケッチ旅行しており、描いたスケッチを元にリトグラフ（石版画、リトグラフィ）を制作しました。そして紀行文も執筆し、およそ2年の歳月をかけて完成させたのが『北欧紀行 古き町にて』です。
『北欧紀行 古き町にて』には東山魁夷が本書のために制作した65点のリトグラフ作品が収録されています。65点のうち「コペンハーゲンの街角」「オールフスの古い町」「ストックホルムにて」「ベルゲンの家」「ヴィラットの教会」「オーデンセの古道具屋」の6点は投げ込みの形でページ内に挿入されたオリジナルリトグラフ作品です。そのほかの作品は扉絵を含め随所に挿入されているカット（挿絵）となります。
なお、東山魁夷は65枚のリトグラフのために215枚の版を描いたことが「あとがき」にて語られています。

『北欧紀行 古き町にて』オリジナルカット

6点の独立したオリジナルリトグラフには画面右下に｢魁｣の落款（朱文方印）が捺され、左下には限定番号が記されています。
なお、当店で買取りさせていただいた『北欧紀行 古き町にて』は限定100部として市場に出回ったものではなく「作者保存」として制作された書籍だったため、限定番号ではなく「Epreuve d’ Artiste（EA）」と記載されています。「Epreuve d’ Artiste」は作家が美術館やお世話になった人へ贈呈する際に用いる作品であり、厳密な規定はありませんがおよそ限定部数の5～10％制作されるのが一般的です。

『北欧紀行 古き町にて』オリジナルリトグラフ
「コペンハーゲンの街角」

『北欧紀行 古き町にて』オリジナルリトグラフ
「オールフスの古い町」

『北欧紀行 古き町にて』オリジナルリトグラフ
「ストックホルムにて」

『北欧紀行 古き町にて』オリジナルリトグラフ
「ベルゲンの家」

『北欧紀行 古き町にて』オリジナルリトグラフ
「ヴィラットの教会」

『北欧紀行 古き町にて』オリジナルリトグラフ
「オーデンセの古道具屋」

なお、『北欧紀行 古き町にて』は限定100部という刊行部数の少なさから幻の画集と言われてきましたが、昭和58年（1983）に毎日新聞社から覆製版（複製版）、平成22年（2010）に講談社から復刻普及版が出版されてます。
ただし覆製（複製）や複刻された書籍が刊行されても、オリジナルリトグラフ作品が付属している限定100部の明治書院本が貴重であることには変わりなく、東山魁夷作品の蒐集家や愛好家にとっては非常に価値のある書籍です。

書名：北欧紀行 古き町にて 覆製版
著者：東山魁夷 島崎千秋編
出版社：毎日新聞社
発行年：昭和58年（1983）
備考：複製画6枚付

書名：北欧紀行 古き町にて 復刻普及版
著者：東山魁夷 東山すみ監修
出版社：講談社
発行年：平成22年（2010）
備考：ポストカード2枚付

愛書館中川書房では『現代作家デッサン集 日本画編・洋画編 全2冊』『東山魁夷全版画集 1956‐1995』『「四季」より 掌の小説と装画集』『七つのリトグラフ 池田満寿夫オリジナル版画集』『中山忠彦作品集』など東山魁夷ほか日本美術に関する古書の出張買取を承っております。オリジナルのリトグラフや木版画などが付属している限定版や特装版といった古書は特に愛好家や蒐集家などから喜ばれます。
以前には『日本画素描大観 全10冊』『東山魁夷全作品集』『古都を描く ドイツ・オーストリアを旅して 東山魁夷画集』『金子国義リトグラフ集』などの美術関係の古書を出張にて買取りさせていただきました。

【当店取扱商品】
『古都』川端康成 東山魁夷装画 牧羊社限定350部／『東山魁夷代表画集』東山魁夷 集英社／『川瀬巴水木版画集』渡辺規編集 楢崎宗重解説 毎日新聞社／『池田満寿夫の陶芸　古代幻視』池田満寿夫 同朋舎出版 愛蔵本

書名：木版画集 京洛春秋 春夏三撰
著者：東山魁夷監修・題字 アダチ版画研究所彫摺
出版社：毎日新聞社
発行年：昭和53年（1978）
備考：限定450部

東山魁夷ほか日本美術に関する古本の買取強化中！

このほか愛書館中川書房では『奈良絵本絵巻集 全15冊』『密教美術大観 全4冊』『長崎派の花鳥画 沈南蘋とその周辺 全4冊』『広重 江戸風景版画大聚成』など現代だけでなく様々な時代の日本美術に関する古書の出張買取を承っております。
『日本古版画集成 全3冊』『王朝盛飾 平安朝の色』『洋風美術回顧図録』『世界デザイン会議議事録』などお手元に気になる品がありましたらお気軽にご相談ください。

書名：能楽図絵 二百五十番 全250図
著者：月岡耕漁画
出版社：松木平吉印刷兼発行
発行年：明治30年（1897）から明治35年（1902）

愛書館中川書房は東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県など関東地方を中心に全国各地へ出張買取にお伺いしております（内容・量・地域によっては出張や買取りができない場合があります）。こちらの買取事例は美術書でしたが、当店では様々な分野の書籍を買取対象にしております。詳しくは取扱分野をご覧ください。
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