　『古書の街』神田神保町の古本屋・愛書館中川書房の古本・古書買取サイト

カストリ雑誌ほか大衆向け娯楽雑誌の古本を出張買取いたします

愛書館中川書房では、カストリ雑誌ほか太平洋戦争終結直後に刊行された大衆向け娯楽雑誌の古本を買取りしております。

大衆小説・読切小説読物・実話読物ほか

「うきよ」民生本社
「情艶奇談」緑光社

「風俗読物雑誌りべらる」太虚堂書房
「オール・ロマンス」オール・ロマンス社

「女体」炎書房
「千一夜」桃源社

「美貌」近代女性社
「ベーゼ軟派娯楽雑誌」櫻文社

「探偵雑誌妖奇」オール・ロマンス社
「サロン」銀座出版社

カストリ雑誌と一緒に買取りさせていただいた古本については「群馬県太田市にて歴史叢書『史籍集覧』ほか6部屋分の古本を大量出張買取」にてご紹介しております。

カストリ雑誌ほか戦後まもなく刊行された雑誌は蒐集家や愛好家などから需要があります

カストリ雑誌とは戦後間もない昭和21年（1946）頃から数年間にわたって刊行された、エロ・グロを主体とした大衆娯楽雑誌の俗称です。
赤線などの色街探訪記事、猟奇事件記事、性生活告白記事、ポルノ小説、女性の写真や挿絵が掲載されました。また、戦前の言論弾圧で消滅したエログロナンセンスも引き継いでおり、戦後のサブカルチャーに与えた影響も大きいといわれています。
当時は戦中の統制下で休刊を余儀なくされていた雑誌の復刊、言論活動の復活などにより活字であれば何でも売れる時代でした。それと同時に戦中に抑圧されていたものが解放される形でエロ・グロ系の雑誌が多数刊行されたのです。

戦後は物価統制令下であり紙不足だったため、カストリ雑誌には劣化しやすい粗悪な仙花紙（古紙などを漉き直した再生紙の一種）が用いられました。判型はB5判（四六倍判）、40ページ前後のものがほとんどです。カストリ雑誌の定義は研究者によって差がありますが、基本的には表紙・小見出し・挿絵が性風俗的なものを指します。
なお、カストリ雑誌の「カストリ」の語源については諸説ありますが、現在は「3合飲むと悪酔いして潰れる」といわれたカストリ酒（粗悪な酒）のように、3号で休廃刊するような粗悪で安直な雑誌という説が一般的です。

カストリ雑誌の嚇矢といわれるのが昭和21年（1946）に創刊された「猟奇」です。翌年には類似誌が刊行されるようになり、カストリ雑誌の本格期に突入します。昭和24年（1949）頃まで書店には数百種のカストリ雑誌が並びました。
有名なカストリ雑誌には「猟奇」のほか「赤と黒」「ロマンス」「エイーベ」「だんらん」「キャバレー」「不夜城」などがあります。また、広義の意味でのカストリ雑誌には中間文芸雑誌「りべらる」、暴露雑誌「真相」「旋風」、探偵小説雑誌「仮面」「蜘蛛」「妖奇」などがあります。
当時は著名な文化人といえども生活苦に見舞われていた人が多く、カストリ雑誌に小説や挿絵を掲載していました。永井荷風・江戸川乱歩・菊池寛・谷崎潤一郎・田中英光・柴田錬三郎・有馬頼義・林芙美子・村岡花子・式場隆三郎・大槻憲二といった有名作家が本名もしくは別名で執筆したほか、東郷青児や岩田専太郎が表紙や挿絵を描いています。また、本格期にはプロの写真家を起用しており、林忠彦などがグラビアを撮影しました。

カストリ雑誌は文字通りすぐに廃刊してしまうものが多く、大事に保存しておくような雑誌でもないため、現存数が少なく入手が困難なものもあります。また紙質の問題から現存していても保存状態が悪い場合があります。
その一方で、掲載された作品のなかには作家の著作集や作品集に収録されていないものも存在しているため、有名作家や画家が携わったカストリ雑誌は蒐集・研究の対象として愛好家などから需要があります。

【当店取扱書籍】

書名：探偵雑誌妖奇 8月号
出版社：オール・ロマンス社
発行年：昭和24年（1949）